今日本は深刻な少子高齢化の時代を迎えて2025年までに127万社の中小企業が廃業するかもしれないという、
大廃業時代を迎えようとしています。
本日は日本の中小企業が直面している後継者不足の深刻さに言及したのち、
「倒産」と「廃業」の違い、更に廃業から中小企業を救う方法を紹介していきたいと思います。
現在の日本の中小企業の深刻な後継者不足問題
2017年版の中小企業白書によると日本には現在役382万社の会社があり、
経済産業省の調査では2015年に70歳というリタイアの基準を迎える経営者は245万人おり、
更にそのうちの約半分の127万人の経営者は後継者が未定となっております。
このまま後継者が見つからないと仮定すると実に127万社もの日本の中小企業が、
残り6年で廃業の危機にさらされることになってしまうのです。、
ちなみに現在年間の廃業社数は年間3万社となっていますが、
6年間で127万社が廃業すると仮定すると、年間20万社という驚異的な廃業ペースとなります。
当然経済にも深刻な打撃があり、廃業の危機の中小企業を放置してしまうと、
2025年までに累計で約650万人の来ようと、22兆円という現在のGDPの4%が失われる事態となっており、
深刻な国家問題ともなっております。
少子高齢化以外の後継者不足問題-構造的な要因が跋扈している-
ご存知の通り、少子高齢化が日本では深刻なレベルで進んでおり、
最も大きな要因の一つとして少子高齢化問題があるのはご承知の通りなのですが、
少子高齢化問題以外にも後継者不足を招いている原因がありあす。
事業継承を行う際の手段は主に以下三つの手段にわかれています。
- 子供等親族への親族内継承
- 企業の従業員への社内継承
- M&Aを利用した第三者への継承
親族内継承が抱える問題点-子供の継承意識の低さ-
1.主に子供の親族内継承に関しては少子高齢化問題が大きく尾を引いていますが、
それ以外にも子供の事業継承への意識の低さも大きな要因となっています。
経産省の中小企業白書によると企業位経営者の子供に、
事業継承の意思をもった子供は「継承はきまっていないが継承してもいいと思っている」
「自分が継承することが決定している」の二つを合わせても僅か18%となっています。
一方、「継承するつもりはない」「まだ考えていない」を合わせると約65%となり、
子供が事業継承に対して消極的であるという点も重要な要因となっております。
子供としても子供のころから親の大変な経営状況を見てきて、
事業を継承するより大企業でサラリーマンをする方が楽でいいやと考えている方が多いのです。
また親である社長替えわも経営環境の悪化に伴い、自社を継がせるのは心苦しいとの観点から、
積極的に子供に事業継承をすすめようとしないという親側からの要因も確かに存在しております。
従業員継承が抱える問題点
子供が無理であれば従業員ということになるのですが、従業員継承にも問題点があります。
一つは従業員の経営の知識の問題です。
従業員としても社長となるべく入社しているわけではないので、
各方面での知識や経験はもっていたとしても、経営に関しては経験も知見もなく、
後継者候補として育て上げている企業は現実的には少なくなっています。
大企業の社長であれば経理財務、営業各部門に責任者や責任役員がおり、
社長が不在であったとしても正直会社全体が機能不全に陥ることはありませんが、
中小企業の社長は社長が全て重要な意思決定を行っているケースが多く、
社長の代わりが務まる人材というのは、なかなか難しい部分があるのです。
更に高いハードルが金銭面の理由です。中小企業では経営を引き継ぐ際には、
従業員や幹部であっても現社長から株を購入することが一般的ですが、
その買取資金である数千万円〜数億円を用意することは至難の技なのです。
以前当ブログでもお伝えしたMBOやLBOという手段を使って、
金融機関からの支援をうけるという方法もありますが、
実際にこのような仕組みが活用できるのは一定規模以上の中小企業に留まります。
👉 マネジメントバイアウト(MBO)の仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく簡単に解説
👉 PEファンドのM&A手法レバレッジドバイアウト(LBO)の仕組み・事例をわかりやすく解説
また会社が金融機関から借金をしている場合は、日本の中小企業では社長が借金を個人的に保証する、
つまり社長は有限責任ではなく無限責任となるというケースが非常に多いのですが、
会社が倒産してしまった場合は、社長が個人的に会社の債務を支払っていかないといけないという
十字架を背負っております。
社員への事業継承を行う場合は、現在社長が有している個人保証を、
新たな社長が担うことになりますので、継承する側の従業員は資金を用意して更に責任まで背負うということになり、
社員への事業継承は非常にハードルが高いのです。
上記のことは親族への継承の場合もいえます。子供が親と同等の経営能力・責任能力を有するとは限りませんからね。
認知度が低く成約数が少ない第三者へのM&A
親族や従業員への事業継承のハードルが高くなっているのなかで、
第三者へのM&Aという選択肢が現実的な選択肢となっているのですが、
2017年の日本国内のM&A成約件数はわずか3000件と、現時点の廃業件数3万件の10分の1。
今後予想される廃業ペースの増加から考えると、
廃業問題の抜本的解決にはなっているといえる状況とは全くいえません。
海外とくに金融先進国の米国においてはM&A件数は2017年度1万5000件、
米国の全企業700万社に対する比率は0.2%となっていますが、
日本の同じ比率は382万社に対して3000件となり0.07%なので、
比率でいっても米国の3分の1という結果になっています。
更に日本の3000社の多くは大企業のM&Aであり中小企業では殆どM&Aが行われていないのです。
以下は日本の99.8%をしめる未公開企業のM&A実績ですが、
3000件のうちわずか2割強の700件程度しかM&Aが行われていないのです。
米国では労働人口がまだまだ増加していくので、少子高齢化が進み深刻な事業継承問題が発生しておらず、
M&Aによる事業継承が真に必要な日本が米国の3分の1というには由々しい事態ですね。
なぜ日本の中小企業でM&Aが進まないのかという理由については二点理由があり、
1点目は経営者の事業継承に対して相談する意識です。
以下は後継者問題の相談相手に対する聞き取り調査の実態ですが、
特に相談相手はいないと回答している方が35%に登ります。
また、なぜ相談しないのかという理由についてもアンケートがなされており、
鼻から諦めている人や、頑なな意思を持っている人、誰に相談すればいいのかわからないなど、
そもそもM&Aによる事業継承を選択肢として最初から除外していることが見受けられます。
また企業規模別のM&A支援サービスの担い手側の問題もあります。
以下、同じく経産省のデータなのですが金融機関やM&A専門会社は基本的に大きな規模の企業しか取り扱わず、
本当に事業継承の危機に直面している325万社の小規模企業はノーマーク状態になっているのです。
この小規模会社の中には確固たる事業基盤があるにも関わらず、
後継者がいないという理由だけで廃業に追い込まれようとしている企業が数多く存在しています。
非常に有力な選択肢であるにも関わらず、
経営者の意識的にも、支援サービスという観点からも手がつけられていないのが、
第3の選択肢であるM&Aの現状なのです。
大廃業時代到来の現状と要因のまとめ
現在日本は2025年までに127万社が廃業するおそれのある大廃業時代を迎えようとしています。
理由としては深刻な少子高齢化の影響も勿論あるのですが、
それ以外にも親族の意識的な問題や、従業員継承の場合の能力や金銭的な問題があり、
ハードルが高くなっています。
解決策として有力な第三者や企業へのM&Aですが、
依然として日本では浸透してきておらず、また中小企業においては殆ど実行されていません。
実際中小企業向けのM&A支援サービスが殆ど存在していないという問題点もあります。
もし、事業継承でおこまりの中小規模の経営者の方がいらっしゃいましたら、
私までご連絡いただければM&Aの相談に乗ってくれるファンドを紹介することもできますので、
ご連絡いただければと思います。