前回PEファンドの買収手法としてレバレッジドバイアウト(LBO)について説明しました。
☞ PEファンドのM&A手法レバレッジドバイアウト(LBO)の仕組み・事例をわかりやすく解説
LBOの説明の中で名前のよくにたマネジメントバイアウト(MBO)について軽く触れましたが、
本日はマネジメントバイアウト(MBO)とは何なのかを説明した後に、
MBOのメリットとデメリット、過去の事例をわかりやすく紹介していきたいと思います。
マネジメントバイアウト(MBO)についてわかりやすく解説
レバレッジドバイアウト(LBO)は主に未公開株に投資を行うPEファンドが、
巨額の買収資金を確保する為に、買収対象企業の資産やキャッシュフローを担保に、
銀行から資金を調達して買収を実施する手法です。
一方、今回本題の名前が非常に似ているマネジメントバイアウトなのですが、
マネジメントというのは経営陣のことを指します。
つまり経営陣が投資ファンドや銀行の出資や融資を受けて、
企業の買収を行う手法です。
MBOとLBOの本質的な違いはLBOが外部のPEファンドという投資ファンドであるのに対して、
MBOは内部の経営陣によって買収が実施される点です。
近年は特に大きな資金を必要としないIT企業などは上場したものの、
上場による資金調達の必要がない場合や既に知名度があり上場している必要性がなくなった企業などで
需要が膨らんでいます。
マネジメントバイアウトの仕組みをわかりやすく図解
ではどのようにマネジメントバイアウトが実施されるのかという点について、
日本政策投資銀行の資料を使いながらわかりやすく説明していきたいと思います。
第一段階:新会社の設立
まずは現在の会社を買い取る為の新しい箱を作ります。
現在の経営者が出資する資本金と金融機関からの借入金と、
場合によってはメザニンによって調達した資金で買収に必要な現金を集めます。
メザニンとは劣後ローンや優先株とよばれるもので、通常の借入よりも返済順位が低く、
株式よりも返済順位が高い株式と債券の間のような特性をもつ資金調達手法です。
メザニンファイナンスは、シニアファイナンスよりも返済順位が低く、シニアに比べてリスクが高い資金になりますが、米国等幅広い投資家層を抱えるマーケットにおいては多様な資金供給手段の一つとして重要な役割を果たしており、シニアファイナンスより投資リスクに見合った金利水準が設定されることによって投資資金としての経済合理性が確保されています。
メザニンファイナンスの導入によって、資金ニーズや資本政策に応じて、EquityとDebtの双方の特色を生かした多様な設計が可能となります。<引用:日本政策投資銀行>
第二段階:新会社による現会社の株主からの株式の取得
まず現株主から現在の会社が株を全て買い取ります。
第三段階:新会社による現会社の株主からの株式の取得
新たに新会社が現在の会社の資本を全て買い取ることによって、
新会社と現在の会社を合併して新たに走り出します。
最終的なバランスシートは以下の一番右の図のようになります。
マネジメントバイアウト(MBO)のメリット
それでは注目される背景とマネジメントバイアウト(MBO)の仕組みについて説明してきましたので、
マネジメントバイアウト(MBO)のメリットについてお伝えしていきたいと思います。
経営の速度を早めることができる
経営者=株主となることから、意思決定の速度を速めることが出来ます。
別に大株主がいる場合は、経営者は大株主を説得する必要がありますからね。
迅速に企業を成長させる為にはMBOは有効になります。
短期志向の株主からの解放により中長期的視点での経営ができる
株式会社の投資家つまり出資者は株価が上昇するかどうかだけを気にします。
つまり中長期的な成長ではなく、目先の短期的な利益を要求してきます。
結果として本当の意味で長期的に企業の為にならないような経営が行われることがあり、
MBOによって中長期的な経営を取り戻すことが出来ます。
事業継承を容易に行うことができる
会社の事業継承のパターンとして以下の三つがあります。
- 創業者の親族による事業継承
- 会社役員つまり経営者による企業内事業継承
- M&Aなどによる企業外によるM&Aによる事業継承
マネジメントバイアウト(MBO)による事業継承は二番目の会社役員などの企業内部による、
事業継承を容易に行う目的として非常に有効です。
一方、レバレッジドバイアウトは三番目を支援する買収手法となっています。
上場維持の為の費用の削減
上場を行うことによって、公認会計士の監査費用や、IRを整える費用など、
上場しているだけで発生する多額の費用を抑えることが出来ます。
敵対的買収TOBからの防衛
経営者によって100%の株式が保有されるようになることから、
敵対的買収を仕掛けられたとして、
経営者が株をHoldingしている限りにおいては、買収されることはありません。
マネジメントバイアウト(MBO)のデメリット
それではマネジメントバイアウト(MBO)のデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
既存株主との対立
MBOでは既存の株主から株を買い取らないといけませんが、
既存株主は当然株価が上昇する見込みであるとして株式を保有しておりますので、
買収価格にはなかなか折り合いが付かない場合があります。
場合によっては実態よりもかなり高い買い物をさせられることもあり得るのです。
経営の体質が硬質化しやすい
経営者が株式を買収しているので、株主=経営者という構図になっており、
経営者の入れ替わりがなかなか起こりにくい体質となっていることから、
凝り固まった経営が長期間持続する状態に陥る可能性を抱えることになります。
資金調達が難しくなる
当然上場を行っていないので、新株を発行することによって、
株式市場から資金を調達することが難しくなります。
マネジメントバイアウト(MBO)のまとめ
マネジメントバイアウト(MBO)は企業内部の経営者が、
金融機関や投資ファンドから資金を調達して株主から株を買い取り、
経営者=株主となる型のM&A手法です。
MBOは優秀な経営者への事業の継承や、上場維持費用の削減や、中長期目線での経営の実現
といったメリットもあるが資金調達が困難になったり、経営が硬質化する可能性もはらんでいる。