前回バリュー株とグロース株の違いを整理して、何故バリュー株特に小型バリュー株の成績が、
最も優れた成績を修めているのかという点を説明してきました。
☞ バリュー株投資とグロース株投資の違いを徹底解説-どちらの成績が高いのか-
今回は最も高い成績を残すことが出来る約80年にわたり歴史的に実証されている、
ベンジャミン・グレアム氏によって開発された本家本流の『バリュー株投資』について、
彼を投資対象にした『ネットネット株』とはどのような銘柄なのか?
現在ではどのように活用されているのか?
という点についてお伝えしたいと思います。
ベンジャミン・グレアム氏とは?-『バリュー株投資の父』はどんな人?-
まず今回そもそもベンジャミン・グレアムがどんな人かという点について、
興味のある方もいると思いますので、また機会があれば本格的に特集しますが、
簡単にベンジャミン・グレアム氏について紹介したいと思います。
(早く投資法が知りたいという方は読み飛ばして頂ければと思います)
ベンジャミン・グレアムはウォーレン・バフェット氏の師として有名ですが、
他にお『バリュー株投資の父』『ウォール・ストリートの最長老』と株式投資を行っていいる人なら、
知っていない人はいない偉大な投資家となります。
バフェット氏はコロンビア大学でグレアム教授の元で生徒として学び、
バフェットもグレアムを父親の次に影響力のある人物であると絶賛していると同時に、
グレアムもバフェットに唯一最高評価A+を与えています。
グレアムはお金については最先端と名高いユダヤ人の家庭にロンドンでうまれ、
幼少期に米国にわたりコロンビア大学で学位を取得後、ニューヨークの証券会社に入社。
その後、バフェットをして世界で初めてのヘッジファンドと言わしめる、
グレアム・ニューマン社を設立してコロンビア大学のビジネススクールで教鞭をとり、
そこでバフェット氏とも出会いました。
グレアムは1929年に発生した世界恐慌で自身も大打撃を受け、健全な投資について研究しはじめて、
後年不朽の名作として現在でも教科書的な立ち位置として投資家の間で愛読されている
『証券分析』と『賢明な投資家』を出版し彼を投資界のスターとなりました。
バフェットも『賢明なる投資家』を投資本の中で史上最高の名著であると絶賛しています。
ベンジャミン・グレアム氏が選好する銘柄-ネットネット株とは??-
ベンジャミン・グレアム氏は将来ではなく今の状態を見て投資判断を下しており、
彼が好んで投資を行っていたのは以下のような要件を満たしている銘柄です。
まずは原文を引用します。
正味流動資産のみを考えた(つまり、工場設備を含むその他の資産は考慮に入れない)簿価よりも安い価格で買える株をなるべく多く取得する。われわれがが買い付けた銘柄の殆どは、この「スリム化された」資産価値の三分の二以下の価格で入手したものである。
正味流動資産とは流動資産から全ての負債を差し引いたものなのですが、
流動資産とは何かというと、一年以内に換金可能な資産のことを指します。
つまり比較的流動的にお金に換えられる資産から、全ての負債を支払った上で残るものが、
正味流動性資産ということです。
流動性資産とは具体的に何が含まれているかというと、
大きく当座資金と棚卸資産の二つに分かれております。
<<当座資金>>
現金預金
営業債券(売掛金・受取手形等)
有価証券
等々
<<棚卸資産>>
原材料
仕掛品
等々
これらの流動資産から全ての負債を差し引いた正味流動性資産の2/3が株式価値を上回っている銘柄を、
投資対象のネットネット株としています。
これがどれだけ凄い銘柄かということをご理解いただく為、簡単な例を用いて説明します。
ある企業Aが以下の資産と負債を保有していたとします。
<<流動性資産>> <<負債>>
現金1000万円 総額 3000万円
営業債券2000万円
有価証券1000万円
棚卸資産 2000万円 ⇓
(流動資産合計) 6000万円 ⇒ (正味流動性資産) 3000万円
<<固定負債>>
建物 2000万円
設備 2000万円
その他 1000万円
今1万株の株式が発行されていたとすると、
(正味流動性資産)3000万円 × 2/3 = 1000万円 ÷ 1万株 = 1000円以下で取引されていたら、
グレアムの購入対象になるということです。
普通に冷静に考えて持っている当座資金と棚卸資産から全ての負債差し引いた金額の
更に2/3だけで株式価値つまり時価総額を上回っていたらもう購入するしかないですよね。
より洗練されたネットネット株の考え方-棚卸資産を疑う-
現在は更に洗練させた基準をネットネット株と考えられるようになっています。
先程のグレアムの基準ですと棚卸資産の評価額の信頼性に疑問が残ります。
つまり先程2000万円と評価されていた棚卸資産が、実際には500万円でしか市場で売れない、
という可能性もあります。
その為、棚卸資産を度外視して当座資金から総負債を引いた『保守的な正味流動性資産』が、
株式価値(=時価総額)を上回っている銘柄をネットネット株として考えています。
先程の例で考えましょう。
<<流動性資産>> <<負債>>
現金1000万円 総額 3000万円
営業債券2000万円 ⇓
有価証券1000万円
(当座資金合計) 4000万円 ⇒ (保守的な正味流動性資産) 1000万円
棚卸資産 2000万円
(流動資産合計) 6000万円
<<固定負債>>
建物 2000万円
設備 2000万円
その他 1000万円
発行済株式数が1万株であれば、
(保守的な正味流動性資産) 1000万円 ÷ 1万株 = 1000円未満で取引されている銘柄を、
取引銘柄とします。
結果的に先程のグレアム流の価格と同じになってしまいましたが、
当然数値が変われば両者に差が出てきます。
現在のネットネット株の方が現金を元に割安さを判断しているので、信頼がおけると考えています。
例えるなら借金のない1000万円の現金を保有し、その他様々な資産を持っている企業が、
700万円で販売されてたら、誰でも買いたくなりますよね。
ネットネット株はどこに存在している??
今まで読んできて、そりゃそんな銘柄があったら購入するよと思われた方が多いのではないでしょうか。
確かにアナリストが分析を行う大型株には、先ほど言及したようなネットネット株はなかなか、
いや殆ど存在しません。
しかし、小型株や超小型株においては、あまり分析がなされない為にネットネット株が、
明らかに超割安であるにも関わらずネットネット株のまま放置されている場合が頻繁にあります。
小型・超小型株に真の割安銘柄が多く存在していることから、最初に挙げた図のように、
小型銘柄のバリュー株投資が高いリターンを長期間に渡って実現されているのです。
小型のバリュー株(平均年率15%)と大型のバリュー株(平均年率10.5%)の1.5倍、
更に小型グロース株(平均年率8.8%)・大型グロース株(平均年率7.6%)の約2倍の成績を収めているのです。
ネットネット株に投資を行う方法
ネットネット株に投資する方法は自分で苦労して小型銘柄の中から探りあてるか、
プロに運用を任せるという方法があります。
前者は頑張っていただきたいのですが、正直地方証券取引所銘柄とかの、
財務諸表を精査しないといけないですし、見つけたとしても何しているのかも分からない銘柄に
投資を行うのは正直怖いです。
バフェット氏も自分が確りと理解している企業つまり論文が一本かけるような企業以外には投資するな、
と警告している通り、未知のものに大切な資金を投資するのは躊躇われます。
一方プロに任せる手法については残念ながら日本の投資信託でネットネット株投資を行っている、
投資信託は存在せず、全てが低PER・低PBRといったような指標に頼った投資を行っています。
私の投資を行っているヘッジファンドはまさにこのネットネット株投資を行い安定して高いリターンを出しています。
以下で詳しくお伝えしていますので参考にしていただければと思います。