実際はPEファンドの中の一形態としてベンチャーキャピタルは存在しています。
以下の通り、PEファンドの中でベンチャーキャピタルは二番目の資金流入量を誇っています。
ただ、PEファンドとベンチャーキャピタルをあえて分けて論ずる場合もあります。
両者に共通していることは上場していない未公開株に投資しているという点です。
では何が両者を分けているのでしょうか?
本日はPEファンドとベンチャーキャピタルは何が共通項であり、相違点なのかという点について記載していきたいと思います。
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PEファンドとベンチャーキャピタルの共通点
日本人の一部には、ベンチャー・キャピタルのことを「足長おじさん」のように「罪のない」ものであるかのごとき誤解をしている人もいるようである。
そうした人は、PEファンドを「乗っ取り屋」のように思うのかもしれません。
会社は株主のものであるという原則が徹底している米国では、一旦ベンチャー・キャピタルの出資を受けると、創業経営者といえども問題があれば株主であるベンチャー・キャピタルによって会社かた追い出されることが珍しくないのです。
つまり米国のPEファンドにもベンチャー・キャピタルにも経営陣の選定・更迭をはじめとして積極的に株主の立場から経営に関与するという点は共通しています。
PEファンドとベンチャー・キャピタルの共通点は以下の二つが挙げられます。
- 投資先企業の価値を高めるための「積極的経営参画」
- 株主価値の拡大を究極の目標とする「株主資本主義」
PEファンドとベンチャー・キャピタルの相違点
基本的にはベンチャー・キャピタルは、まず大きな将来性を持った創業者の活動がなくては始まりません。
しかし現在の日本には「将来この会社はマイクロソフトやアップルのように成長するであろう」と思われるとうなベンチャー・ビジネスがあまり多く見当たらないところに、
日本におけるベンチャー振興のひとつの根本的な問題があります。
一方、PEファンドは既存の大手企業の子会社や一事業部門を独立させて成長軌道に乗せるとか、
業界の再編・集約化を推進して収益性を高めるなどという形で「既存の企業や事業」を出発点としても行い得るビジネスなのです。
これはバイアウトという手法なのですが、
プライベート・エクイティのほうが現在の日本では現実的な実行可能性がより高く経済社会へのインパクトも大きくなっていくことが想定されます。
我が国の成熟企業には人材・技術・ノウハウ・資本などあらゆる点での蓄積があり、
これらを効率的に活用することは産業構造の変革、付加価値の高い新規産業の創出・育成、成長企業の排出のために重要かつ必要なことなのです。
要するにベンチャー・キャピタルだけに注目するのは不十分で、プライベート・エクイティの利用可能性も大いに認識しておく必要があるのです。
PEファンドを利用して行う得るパターンについて列記すると以下のものが挙げられます。
- 本業回帰を目指す企業において戦略から外れてしまった事業部門を、PEファンドが買収する
- 倒産状態に至った企業をPEファンドが買い取り、回復軌道に乗せる。英語でいうとたーなラウンドと呼ばれる戦略です。
- 後継者問題を抱えるオーナー経営の企業を、PEファンドが受け皿となって買収する
これらはベンチャーキャピタルの対象ではありませんが、PEファンドにとっては典型的な投資パターンなのです。
日米の企業育成能力の違い
今後の日本において重要なのはPEファンドとベンチャー・キャピタルを対比させることよりも、企業育成能力に関する違いの方が重要となってきます。
積極的経営参画は米国のPEファンドとベンチャー・キャピタルに共通した特徴ではありますが、それを実行するには企業経営のプロが必要になってきます。
しかし、現在の日本の実務においてはプロの経営者が圧倒的に不足し、日本では買収対象会社の経営をできる経営のエキスパートが不足しているという厳しい現状があるのです。
以下は日本のこうした状況に対しての各方面からの痛烈な批判となっています。
「日本でベンチャー・キャピタル投資を行うために経営者を送り込もうとしてっも、そのリクルートがしばしば困難である。日本のサラリーマンの大部分はCompany Specificだからである。現実的に考えると、日本の外資系テクノロジー企業で米国流の企業経営手法を学んだ人々をリクルートすることが最も推薦できる手法である」(NYのある後援会における、米国人ベンチャー・キャピタリストの発言)
「日本のベンチャー投資は30年ほど前にはじまったが、バブルで盛り上がった一時期を除けばそのパフォーマンスは悲惨である。原因の一つは資金を細かく切り刻んで多くの会社に投資した結果、ハンズ・オンな(=直接的な)経営参画ができなかったことである。1人の担当者が70社も担当していては、各社のビジネスの内容を頭にたたきこむだけでも大変で、ましてや役員会に出席して経営に貢献するなど不可能である」(シュローダー・ベンチャーズ代表トロ島利益静永賢介氏)
「ややきつい言い方ですが、日本のベンチャー支援施策が失敗してきたのは『日本のベンチャー・キャピタルにはベンチャーっ企業に投資し、育成する能力があると勘違いしている役人がいたから』だと思っている。」(霞が関の官僚発言)
日本で支援セクターとよばれてきたベンチャー・キャピタル会社などには、経営面に関する支援によって企業を育成していく人材や能力が不足していたということ、
あるいは経営のプロが不足していることを指摘しているのです。
伝統的な日本のベンチャー・キャピタルの多くは、出資ではなく融資を主力業務としていました。つまり高利の資金を中小企業に融資するというノンバンクとしての機能が中心なのです。
総括
PEファンドとベンチャーキャピタルは積極的に経営に関与して、株主価値向上に努めるという観点においては同じであるが、
ベンチャーキャピタルが有望な駆け出しの企業に投資するのに比してPEファンドが成熟企業のある分野や、破綻しかけた企業の再生を担っているという分野の違いがある。
日本において問題なのは、いずれも積極的な経営が出来る人材の不足であり、今後日本の人材市場でのプロ経営者の育成ができるかどうかが重要となってくる。
そんな中、既にヘッジファンドを設立して経営者として5年以上成長し続けている敏腕社長によって運用される日本初のPEファンドに興味のある方は以下記事をご覧いただければと思います。